蛇腹の子供たち

アコーディオンの発表会「Les Enfants Du Soufflet--蛇腹の子供たち--」に出る。
一年半ごとの開催だから、例えば職場だったらひと月で終えるであろう名前覚えに、5年もの歳月を費やしたりする。覚えては忘れる。でも演奏とか選曲とかとともにじわじわ覚えた人たちは、じっくり煮込んだボルシチのような味わいがあるもので、幼児から70代まで、ボタンアコーディオンが好きな人たちが集まって、毎度楽しい。

今回は、かとうかなこ先生の「忘却のキス」を弾く。これまでにないくらい緊張した。上手に弾けるかな、間違えるかな、客席で舞台を眺めながら、いらんことを考えて、失敗する自分の映像を何度も見る。
そうだ、本番で練習のように弾けないのは、練習どおり弾きたい体を自意識が邪魔しているのだ、体に委ねよう、となんとか思い至る。

事前のラジオ体操の演奏で体がほぐれたのもよかったのだろう、本番では気持ちよく弾けた。「おっ次は難しいフレーズですね」「聴衆の前にいますね〜ヒヒヒ」「舞台に住む魔物に打ち勝てるか」など、次々に浮かぶ思考(と五輪解説者)を制しつつ。まったく自意識ってなんなのか、とんだじゃじゃ馬である。

打ち上げの〆の挨拶で、先生が「自分で弾こうと思わず、楽器に弾いてもらうといい」と言っていた。そうか〜と腑に落ちる。委ねることだ。

今回はロビーで「蛇腹の赤子たち展」として、紙工作も展示させてもらい、いろいろと面白かった。