山滑り

翌日は伊吹スキー場へ。
今年は雪不足といえど最近冷え込んでいたので大丈夫だろうと思っていたがその読みは甘かった。
広いコースは雪がなく閉鎖されていて、唯一滑れる林間コースは、当然せまく、はしゃぎすぎると谷間に落ちそうになる上に、方々地肌が露出していて、そこに多数のスキーヤーボーダーが集結する。この恐怖。


ところで私はリフトとは怖い乗り物であることよ、うっかり足を木にひっかけたら怖いなと、常日頃懸念していたのに、今回ついにおそれていた事件が起こった。
リフトに乗るとき、我が君が乗り損ねて、転落した。
しかしリフトは止まらずすすみ、さらに彼のストックが私のスキー板にひっかかって私の足が後ろにもって行かれた。
瞬間的に「なにしやがる、べらんめい」と思い
意識的には「意地でも乗ったままキープ」に過半数投じられ可決されたのだが
からだの防御反応なのか、素直にリフトから落ちて伏せの体勢をとった。
そして次のリフトにぶつからないよう避難体勢をとったところで
ようやくリフトは止まった。
二人とも無事だったし、下手な意地は持たぬがよろし、という人生教訓を得たのでありました。


恐怖エッセンス込みのスキーはひと味違う楽しさで、雪の重さも含めて、自然の雄大さというよりもっと現実的で原始的なものだった。名付けるなら「山滑り(雪あり□)」といったところ。


家に帰ると、スキー靴のしめつけで足の少し伸びた薬指の爪が隣の中指に突き刺さっていた。あな恐ろし山滑り。