枕草子ナイト

清少納言に “おかは、船岡” と讃えられた、船岡山にはじめて登る。 どうして今まで来なかったのか、いつも通る北大路からほんの5分程度であっけなく山頂だ。 街を一望できるし空も近く下界より涼しくて気持ちいいなーとベンチの上で深呼吸していると、いづこからか登場した翁に豆知識を吹き込まれるという怪におそわれた。それも二度も!

「あの岩、何か知ってるか」
記憶がおぼろげだけど、翁1号も翁2号もそんなふうに話しかけてきたように思う(同じ台本を使っているのかしら)。
そうして翁は、桓武天皇船岡山を北の目印にして平安京を造営したこと、その岩が朱雀大路の拠点となったことなど説明してくれたけど、どちらの翁も天皇や大路の名前を失念していた。 かなり怪しい。 翁2号にいたっては、ここは葬送の地だったから日が暮れる前に帰るよし、などと言いつつも30分以上話し続け、どんどん日が傾いていくのであった。


怪老人にまやかされた後、口直しに下鴨の疏水に蛍をながめにいく。 もう終りなのか、多くはおらず、ふわーと光って消える黄緑色がなんだか切なかった。 小雨の降る夜は光がにじんでさらに幻想的だったような。
やはり“夏は夜”がおもしろい。