てぶくろ算

ここ数年、「人生で手に入れた手袋の数」と「失った手袋の数」が、イコールで結ばれていた。だから、指先はいつも冷えていた。
冷えた朝や凍る晩には、冷えて痛んで指先の感覚がなくなる。そういうとき、失った手袋のことを考える。ああ、あれがあったら!
数年前、3つ手袋をもらって3つなくした。皮付のオレンジ色の手袋、ふわふわの手袋、シンプルな手袋。ふがいなさすぎる。だから手袋がなくっても仕方ないのだ。裸手の刑を受けているのだ。でももし、次に買うなら、なくした3つを超える機能性がほしいとも思っていた。そうじゃないと、またなくしてしまうから。

そんなある雪の舞う日、邪気は指先から入るという話を思い出して、ぷらっと入った店でついに買った。
「入手数」−「損失数」= 1
なんと暖かな計算式。冷えた朝、これまでの受刑習慣で裸手で街をゆく。ああ、手袋があったら!あ、あるんやった、とポケットに手を伸ばす幸せ。買った手袋は、なくした3つよりも薄手で暖かくないけれど、ポケットに収納できるのでなくしにくい。それが私にとって一番いい手袋だったのだ。