植田正治展
知人から届いた絵葉書にキュンときた。ドアノーの「ディオールのビル正面」という写真。
そのハガキに「昨年のドアノー展は良かった。植田正治展も行かねば」と呪文のように記してあったので、なんのこっちゃわからないが、伊勢丹の美術館「えき」KYOTOで催されている植田正治展に行ってみた。
予備知識はクラスメイトから聞いた「植田正治(ショージ)は鳥取砂丘の写真で有名な写真家」のみ、白黒写真展は初めてだったが、白い壁に白黒写真がならんでいる様は静かでとても素敵だった。
ポスターにもなっている、砂丘に家族を並べた写真のシリーズが可愛らしい。「カコとミミ」「パパとトッチン」「パパとママとコドモたち」と続くと、親しみがわいてきてカコやミミやトッチンと知り合いのような気持ちになる。
そうして、最後に家族のプライベート写真で展示は終わる。没後出版された未公開写真集『僕のアルバム』に掲載されている妻モデルの写真だ。妻の表情がなんともあどけなく優しい。
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好きなものしか撮らない夫のモデルとなり 好きなことしかしない夫を影で支え それが幸せだった
あと2年で半世紀も一緒にいたことになったのに 妻が先にいってしまった
…
妻がいなくなった直後の写真は無口に見える
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(『僕のアルバム』より)
じーん。
翌日学校でその話をしたら、皆がさまざまな白黒写真集を持ってきてくれた。
ロベール・ドアノー、エリオット・アーウィット、土門拳…写真って記録用途の印象が強かったけど、こんなチャーミングに時間を切り取れるとは。こんなに物語を秘めさせられるとは。(その後、皆の衆は古いカメラを持ってきては何のかんのとカメラ談議に花を咲かせている。いい学校に来たものです)