西下り

3ヵ月の訓練校生活が終わり、私は京都から神戸に越してきた。

荷物搬出後のラスト2週間は特に、三種の神器(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)のない中でひっそり生活しており、花の都の月をめでたり酒を飲んだりの原始的な娯楽を謳歌し、訓練校にも傾倒していたので、修了直後は心がちぎれたようにひりひりした。

そして、ずいぶん都落ちしてしまった。ここ山の街は近くのスーパーに行くにもコンビニに行くにも、吸う吸う吐く吐くの呼吸法をとらないと参ってしまうくらいの急坂が立ちはだかる。山だから。本屋に行くためには怖いトンネルを越えなくてはいけない。山だから。週末の買出しは、バックパックに大量の食材や生活用品をつめて、重くなった自転車で急坂をかけのぼる。なんの修行か。
まぁでも効果はあらわれ、空まで続く坂道を見て泡を吹いた当初に比べると、坂を越えながらも山&雲の夏休み風景に心をうばわれる余裕もできて、ちょっとだけたくましくなった気がする。(しかし我は一体いつになったら車社会の恩恵にあずかれるのだろうか…この街で自転車に乗っている人を見たことがないのであった)