森にもっていくもの

海岸ビルヂング Gallery Vie アンネ・ヴァスコ+福田利之 展「森」を見に行ったところ、運よくトークイベントに参加できた。このイベントは気づいたときにすでに満席で〆切られていたいたもので、ハハァ今日だったかぁと、どっちつかずにもたもたしていたら、白髪のおじさんが「いいよ、せっかく来てくれたんだから入りなよ」と許可してくれたのだ。きっとこの白髪天使が福田さんだろう。

トークイベントの登場者は、福田利之さん、フィンランドの絵本作家のアンネさんと通訳の森下圭子さん、なぜか荒井良二さんというそうそうたる面々。森下さんはフィンランド在住で「かもめ食堂」のアソシエイトプロデューサーというから乙女たちがざわざわ色めき立たっていた。アンネさんはカラフルなボタンが7個くらい縫いつけてある白い服を着ていて、はにかみながら話す姿が素敵だった。そして福田さんは先ほどの白髪天使ではなく、黙々と参加者45人分のコーヒーを淹れつづける書生風男性であった。

今回のポスターの裏に、それぞれが森にもっていくものが記されていたのだが、大阪育ちの福田さんが魔法とか口笛とか夢見がちなものを答えているのに対して、アンネさんはコンロとかコーヒーとかシナモンロールとか迷わないための小石(!)とか、地に足のついた実用品を答えているのがおもしろい。フィンランドでは森は日常なのだ。またゆかいなことにフィンランドでは「森」の定義がなくて公園の中のたった3本くらいの木の中でも「森」と呼ぶそうだ。(…ということはフィンランドの国土の70%は森、という情報も要確認である)

福田さんが丁寧に淹れてくれたコーヒーはいい香りで浅く渋くじんわりおいしくて、ゆるい話を聞きながらなんだか素敵な夜であった。