伊丹市

耳詰まり(プールで耳に水が入った感じ)がひどいので、引越し先の街の耳鼻科の門をたたき、治療を受けている。
江戸川乱歩描く怪博士そのものである老医師は、眼光鋭く、果敢に鼓膜付近まで吸引してくれるので耳詰まりとカビはひと段落し、おかげで耳に悩まされる時間も減った。ただ老医師の声が、診察椅子の頭部よりスピーカーで聞こえてくるのは、乱歩度が高くてちょっと慣れないのだが。

昨日、治療を終えてレストランをさがし、チェーン店のすきまに昭和の喫茶店のようなスパゲティ屋を発見した。京都の寺町にあるトラモントに風情が似ているし「食後に店主とオセロができます」という貼紙も気になったので入店。

お年寄りのウェイターと料理人は親子だろうか。「赤字の為バイトは雇いません」となぜかメニューに書いてある。
「茄子ときのこのトマトソース」を頼むにあたり、「きのこって何ですか?」と老ウェイターに聞くと、絶句した後「きのこは…きのこ…です」と肩すかし。質問の仕方が悪かったかと思って「椎茸苦手なんですけど入っていますか?」と問うと「アァ椎茸。そういうものは使わないんですよ」と諭された。パスタ界の常識だったっけ。まぁよい。

スパゲティを美味しく頂きながら、初対面の人とオセロをする気まずさについて考える。しかし。私は家族の中では王者だったが外ではどうなのだろう、それを知りたい気持ちが勝り、おそるおそる申し出た。老ウェイターは「今はちょっと…あいすみません」と迷惑そう。しかし、ばたばた料理人が出てきて、オセロサービスのシャーベットとオセロ台を出してくれた。なにがなにやら。この時点ですでに翻弄されており負けは決まっていたのかもしれない。

オセロは、序盤優勢だったのだが、「もうあなたはここしか置けませんね」というあおりに乗せられて、普段しないようなリスキーな一手を打ってしまい、それがアダとなって負けた。失敗の一手のとき「アァーこれであなたの負けは確定しましたね」と言われたことを思い出すたび腹が立つ。相手のペースに乗せられるというのはああいうことなのだろう。

新しい街は大阪にもほど近く、怪人変人の多い街のようだ。お店にあった仕掛け絵本はすばらしかったけど。

あかまるちゃん (しかけえほん)

あかまるちゃん (しかけえほん)