六花亭三昧

北海道に住みはじめた山本一家を訪ねて十勝地方・中札内(なかさつない)村へ行ってきた。
どこでもドア速の飛行機であっという間に、見わたす限り畑の北海道景色、じゃがいも・玉ねぎ・とうもろこしがどっさりゴーロゴロ。帯広市にほど近い中札内村には、あのストロベリーチョコでおなじみの六花亭の工場があり、六花亭の管理する美術村などもあって、六花亭三昧の旅行となった。

初日に中札内美術村で六花亭製の芋ケーキをいただき、また別の日にも帯広市六花亭直営店でサクサクパイ140円を立ち食いスペースでいただく。サクサクパイは賞味期間たった3時間――「サクサク」のために。ショーケースにも1時間以上は置かない――「サクサク」のために。

そもそも六花亭にケーキがあること自体知らなかったのだが、驚くなかれ すべて100円台という低価格で購入できる。ショートケーキが180円、チーズケーキが140円。それは六花亭が誰でも買える「おやつ屋さん」をめざしているからだそうな。すてきだ。
ふいに従業員がじょうろで店内に水をまく打ち水をはじめ、客が皆よける。サクサクパイと低価格で六花亭信者となった私は、それにも柏手を打って拝める心持ちだったが、やまりんが「あれ、ちょっとおかしいよね」と異を唱えて目が覚める。たしかに、室内で打ち水でお客様を迎えるというのは、機能性というより精神性&パフォーマンスという感じ。おもしろいけど「サクサク」にもよくないしね。

そんなまっさらな目線をもつおふたりの子・ののちゃんは自身の気持ちにも森羅万象にも自分らしく立ち向かい表現ゆたか。来たる4歳の誕生日のため「チョコレートケーキはふわふわで、こういうふうに(下を向いた犬のポーズをしながら)いちごが逆立ちしているんだよ」と頻繁に主張していたときは気付かなかったが、実際に六花亭のチョコレートホールケーキいただいくとき、たしかに、といちごの逆立ちを知った。

またとある日は、中札内の六花亭工場に併設する六花の森に自転車で向かう。牛臭さをぬけて甘い香りがしはじめたらそこが工場だ。包装紙に描かれた草花でいっぱいの森を10年かけてつくるという構想の「六花の森」、5年目は土の深いにおいがして、エゾリンドウが咲いていた。
六花亭のつくる児童詩誌『サイロ』の50周年記念館では坂本直行描く表紙がずらり。圧迫感のないのは窓が大きいからか、虫や草花の絵柄がやわらかいからか。とても静かだ。
 

中札内美術村でも花柄包装紙50周年展をやっていて思ったけれど、チョッコーさんの絵って骨太なタッチで誰でもかけそうなんだけど、写生力なのかなんなのか、すてきだ。直行さんの語るように「小さな草花でも丹念にその場で写生したものだから、私の心がこもっている」からなのかね〜。

パッケージにサイロの詩が記された六花亭チーズサブレを購入して、最終日の退職のあいさつに配ったのだが、評判がすこぶるよかった。