献血

針で刺されるのが怖くて、献血をしたことは1度しかない。
そのとき私は大学生で、夏で、バイトをさぼって、やるせない体を引きずっていた。青山(東京ではなく新潟)のジャスコ献血車がぼんやり見えて、自分のろくでもなさをどうにか薄めたくて、針の恐怖に自らを追い込んだ。輸血をしていて遅れました、とバイト先をごまかせるかもしれないという打算もあったような気がする。その潔癖性も子供だましな言い訳も、青い。

そして今日、イズミヤ献血車があったのでふらりと入った。頭痛がひどいしご飯もろくろく食べていないのにそうしたのは、昨晩夫に言い過ぎたという自責の念だ。消えてなくなってしまいたい捨て鉢な気持ちを、400ccの血に凝縮して、さらに誰かに使ってもらうなんて素晴らしく平和で建設的じゃないか。
しかし、鉄分が少なめなので今日は無理だと判断を下される。宙に浮く消失願望だったが、検査のための採血だけでクラクラして もうどうでもよくなった。400ccとったら本当に消失の淵をさまよったかも、危ない。そんな役立たずであったが謝礼に卵やらいただいたので、好物でも作ってやろうかともくろんでいる。いろいろあっていろいろ面白い。