木の名前

毎日 職場の庭を散歩している。「庭に出てはいけないのでは」という社員伝説のようなものによって、ふんわり裁判にかけられたりもしたが、はんなり無罪を勝ち取ってふらふらしている。どんぐりなどの木の実が沢山なるし、あかい葉も散っていき、おもしろい。
しかし木の名前がさっぱりわからない。このプチトマトのような実はなんだろうか。六花亭の包装紙の「はまなし」に似ているけど、十勝の六花がまさか京都にねぇ。お喋り好きの庭掃きのおじさんは「つばき」と言っていたけど、いやいやそれは違うでしょ。
本屋で調べても見当がつかず悶々とする日々の果てに、無口な庭師のおじさんに聞いてみたところ、造作なく「くちなし」だと教えてくれた。
くちなし---梅雨前に蜜女のように甘ったるい匂いを放つあの花? 身ごもったのか? むせかえるくちなしの匂いのなか生霊となったのは源氏物語の六条の御息所だったか。くちなしの実は、そんな狂気すら忘却の彼方然とした あたたかな秋の実であった。
フィールド・ガイドシリーズ23 葉で見わける樹木 増補改訂版 (小学館のフィールド・ガイドシリーズ)そんなこんなで庭師のおじさんに教えてもらいながら、知り合いの木をふやしている。以前は名前を調べるため採取した葉をうっかりオフィスに落としては秘密警察を出動させていたので、おじさんに感謝である。(図鑑はこれがわかりやすい)