落語ことはじめ

坊さんがお説教をわかりやすくするため、笑いをちょいと盛りこんだのが落語のはじまりだそう。ところは京都の誓願寺、坊さんは「策伝(さくでん)上人」。策伝忌に行われる落語奉納会はプロの噺家がくるのに無料と聞きつけ、7日さっそく京都へかけつける。
この落語奉納会、江戸落語上方落語どっちも聞ける珍しい会だった。初めて聞いた江戸落語話し言葉のなんとかわいらしいこと! 語尾に「よ〜」とつくからか?「やだよ、お前さん」なんて言われると、たまりません。

そのときの噺家が数人出演するというので、10日、大阪の繁昌亭「福岡県人会」にもかけつける。
博多弁の落語も新鮮だった。でも何より「博多にわか」が謎めいていた。なんですか、あれ。奇妙な面をつけて洒落を言ったり踊ったり。お座敷芸のようなゆるさと西の奇天烈さに、今何時代なのか、ここがどこかわからなくなり、時空に酔ってお腹を下してしまった。

そんなこんなで落語が落語を呼んで繁昌亭の落語入門講座に通いはじめた。最初の課題は小咄「くちなし」。上方の言葉が難しい。金沢弁やったらいいげんけど。

14日間十勝ステイ

十勝・中札内村にしばし滞在した。

農場バイトでも、とヤムヤムのつてで小畑農園でお手伝いさせてもらう。
小畑農園は自然栽培をしていて、雑草も虫も作物も仲良くしているそうな。ときくと理想郷のようだが、実際の見た目は、草がぼうぼう「荒れ地」のようで、十勝平野の畑のなかで異彩を放っていた。
作業は宝探しのよう。雑草の下のじゃがいもを収穫したり、意図せずみのった人参をさがしたり、うっかりカブをふんづけたり、行く手を草にはばまれて迷子になったり。げらげら笑って面白おかしい。いただいた野菜がまたうまい。

その一方で、十勝で一般的な「広大で整然とした畑」にて頑張る農業機械にも、車窓から眺めているうちに惹かれていく。色も素敵だし格好いい。収穫シーズンとあって、ライトをつけて夜まで働いていた。

巨大なカニのようなこの農業機械はポテトハーベスタ。ぐるぐるしたものがジャガイモエスカレーター、これで上がってきた収穫芋はカニ口のようなコンベヤで送られて、ほろの中の人に手作業で選別される。

かつて帯広畜産大学 獣医学部を受験するも別の大学の農学部に入り、農場実習で農業機械に乗ったりしていたが、そんな受験/学生時代を伏線となすような14日間であった。伊丹に戻ってからも、大人買いしたshiku社小型模型(1:50)をニヤニヤ眺めたり、自然栽培できそうな空き地をさがしたりしている。
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地獄めぐり

絵本 地獄――千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵幼な子のしつけに便利らしく地獄絵本が売れているようだが、わたしは幼き頃より地獄がすきであった。
三途の川、剣の山、釜ゆで…あちらの世界の異文化にうっとり。絵巻に登場する餓鬼もたまらぬフォルム。別府や熱海に地獄があると聞いては、いつか物見遊山に行きたいと願っていた。これは、まんが日本昔ばなし「地獄のあばれもの」の影響である。

地獄に落ちた三人が協力して剣の山や釜ゆでを解決していくというお話なのだが、今日の桂吉弥独演会で聞いた古典落語「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」がそっくりで驚いた。初めて聞く80分もの長い落語に、ところどころ記憶があって、さては我は地獄体験者かと疑ったが、「地獄のあばれもの」の原典が この落語だったようだ。
落語「地獄八景亡者戯」は、鬼が三途の川の渡し賃をちょろまかしたり、あの世の観光をしようと ふぐの肝を食べて集団自殺をはかったりと、とかく80分間ずっとばかばかしい。閻魔大王の前で尾崎紀世彦が歌ったり、会場が文楽劇場だったので橋下市長の文楽批判を皮肉ったりと、時事ネタを入れるのも特長のようだ。
じごくのそうべえ (童心社の絵本)時々うつらうつらしたため、自分の内と外の境界がうすくなって自身の体験のように記憶してしまったこともあり、死なずとも地獄ツアーを満喫できた。別府や熱海では満足いかなかった夢の実現である。
この落語を原作として、『じごくのそうべえ』という絵本も出ている。立ち読みしたら、こちらもテンポよく楽しかった。「そんなことしてると地獄に落ちるよ」という効力はなさそうだけど、それでよいと思う。

町家でヤムヤム展示会

結婚披露宴でお子様ランドをつくってくれた、旅一家ヤムヤムが京都の町家で展示会をするというので、最終日に京都・岡崎にやってきた。
会場となった町家ギャラリー「メトロポリタン福寿創」はかつてはゲストハウスで、私の友人の友人が経営していることから、ヤム上洛の際に「動物園近く獣の鳴き声が聞こえる宿」として紹介した記憶がうっすらあるが、ご縁が続いていたなんて素敵なことだ。
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町家の入口に怪しげな予感…お雛様がお出迎え。手作り市以来2度目の上洛で、その時はにわか雨でビニルシートに包まれていた。京都に縁のあるお雛様だ。
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[:W200:left]中の四畳半には四畳半双六が。
もうすぐ5歳になる野乃ちゃんの、誕生1周年記念に作られたもので、誕生から二足歩行まで進化の道のりがゆかいに描かれている。今回展示だから作り直したのかと思いきや、そんなしゃらくさいことはしないのがヤムヤム。いつぞや晩秋に泊まりに行ったとき断熱材として布団の下に敷かせてもらったままのものなである。暮らしの楽しみというのは本来こういうことだとハッとさせられる(大げさだが)。
子連れのお客さんが「うちの子も、うんげーうんげーって言ってたな」と共感していた。

2階はヤムヤム旅新聞がカテゴリ別に掲示されていた。創刊号東北編は「神のちからっ子新聞」をオマージュしたそうで郷土の匂がして力強く、最新号北海道編は暮らしの手帖のように涼やかにつづられていた。子供と作ったのかダンボール版もあったりと、ひとつのフォームにとらわれず自由で楽しく作っていることに、またハッとさせられる。
縁側には坪庭の石に向けて水鉄砲が常備されていたが、そんな感じのちょっと遊べる展示会だった。9月、とかちツアーの旅新聞を傍らに訪れるのが楽しみ。



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第三の男

かとうかなこ教室のアコーディオン発表会で「第三の男」を弾いた。
ヱビスの曲として有名なこの曲、ここ1週間は毎日何十回も弾いて、なかば嫌いになりかけて、本番では走りすぎたけど、楽しく弾ききった。

打ち上げでは、隣に座った中学一年生の生徒さんに競馬での馬の見極め方について教えてもらう。パドックで馬の様子を見るポイントは以下5点だそう。次回いかしたい。
[1、お尻に張りがあること。体調不良でやせてきていると張りがなくなるから。
2、歩くとき首がリズム良くぐいぐいいくこと。並み足で本番の駆け足と同じように首を振るから。
3、毛つやがいいこと
4、汗をかいていないこと
5、落ち着いていて堂々としていること

そんな阪神的中学生がいるかと思えば、模型飛行機の世界選手権に出場する人がいたりと、変な人が多くて面白おかしい夜だった。皆アコーディオン好きである。

こんど居酒屋でまた披露しようと思っているので、第三の男との付き合いはしばし続きそうだ。

桂三枝改め文枝襲名披露公演

文枝さんの襲名披露に2日連続で繁昌亭へ。

じっと座っているのは苦手だけど、繁昌亭は高座が近いため噺家の表情やシグサがよく見えていい。
特に2日目千秋楽は、聞きたかった名作古典から三枝さんお家芸創作落語まで、てんこ盛りだった。

桂阿か枝 「子ほめ」
桂文三  「四人癖」
桂春之輔 「皿屋敷
桂朝太郎  マジカル落語
桂枝三郎 「地獄八景亡者戯」
桂ざこば 「鉄砲勇助」
中入
口上
桂米團治 「淀の鯉」
笑福亭松枝「紀州
桂文枝  「赤とんぼ」

ざこばさんはいつぞやの高座と枕・ネタともに同じだったけど、話し方も間のとり方も、どこまで本気なんだか危うくて目が離せない。一方で文枝さんは枕もネタも最後のあいさつも、2日間で全く異なるものを用意するという優等生ぶり。ネタもなんともあとをひく。ネタのなかに出てきた「水島、日本に帰ろう」というセリフや、歌う前に「ドレミドレミ」と喉をならす仕草は、すでに我が日々にとけこんで、独り言となってしまった。どうしてくれよう。

繁昌亭の後は梅田サンケイホールブリーゼの「米朝米寿展」へ、米朝アンドロイドを見てきた。
動きのぎこちなさや肌ののっぺり具合は、アンドロイド感が否めないものの、眼が動くと生き物に見えるから不思議。米朝アンドロイドの高座もかっつり面白かった。
好きになるとやってみたくなるのが人のさが。繁昌亭の「落語入門講座」に応募しようか迷っている。

コクゾウムシ

さくらももこ著『もものかんづめ』に、一口当たり4-5匹のコクゾウムシがいる炊き込みご飯を食べる羽目になった話があったが、あれから20年、それが他人事ではなくなってしまった。

義父からもらった米にコクゾウムシが大量発生している。
はじめ1合につき3匹ほどだったのが、この気候が合ったのか、1週間後には10匹/合、10日後には20匹/合というペースで栄華を誇り、米をとぐ時のつまみだす労力と憂鬱は増すばかりだ。
虫を追う。すくう。水に入れる。追う。すくう。入れる。追う。すくう。入れる。水のなかでもがく虫たちが集合体をつくるのを見てぞっとする。追う。すくう。入れる。
10年ビンテージ米に容赦なく見切りをつけた夫氏も、はじめは「虫はおいしい米につく」と呪詛めいたことを唱えながら、スプーンで虫すくいに応戦していたが、早々に合理性などを訴えてさじを投げた。
しかい彼を責めてはいけない。コクゾウムシというのは米粒のなかに卵を産み、米粒内でウジ虫時代を過ごすため、なんとか成虫を駆除しても、米粒内に隠れていたウジ虫がどんどん成虫になる。ぞっとするしやるせない。江戸川乱歩を地で行く昆虫界、降参してもしかたあるまいよ。

その一方で私はコクゾウムシに愛着がわいてきてしまった。どんくさいし、ゾウのような長い鼻はチャーミングだ。そこで生態を観察した結果、なんとかやっとこ駆除に成功した。ネット界にあまりなかったので、その方法を以下にまとめる。<コクゾウムシの駆除方法>
1.米を屋外で広げる。
コクゾウムシは明るいところが苦手なので、隠れるところをさがして大方は去ってしまう。それはそれは、ぞっとする風景でした。
2.残った虫をつまみ出しながら米をビニル袋に入れていく。
3.米の入ったビニル袋を乾燥しないよう口をしばって冷凍庫に入れる。
コクゾウムシは冷凍庫で死ぬので、これ以上増えることはない。
4.米をとぐ時、水に浮く米粒にはウジ虫が入っていることが多いので、捨てる。
食べても害がないらしいので、ウジ虫米が気にならないならこの手順は不要。